インド更紗とは
インド更紗とはインド産の綿織物のことで、インドの綿織物の歴史は諸説あるようですが紀元前とかなり古く、約3000年もの歴史があるそうです。日本に綿織物が伝来したのが約600年程前の室町時代と言われているので、日本での綿織物の歴史は世界と比べると意外と浅いようです。
インド更紗は何色かの天然染料または植物染料を使用しペイズリーや草花をモチーフにしたボタニカルデザインの物が多いです。また肌触りの良さや吸収性、耐久性が良い事から世界中に広まり、一時はイギリスの産業に影響を与えキャラコ論争という政治的問題まで発展した、良い意味で非常に影響力のあるインドの産業技術とも言えます。
ハンドブロックプリント技法
インド更紗の1つ、それがハンドブロックプリントです。職人が木版に彫刻を施し、そこに染料を塗り人の手によって布に捺染して模様を描いていく技法で、簡単なようで実はすべてが手作りで完成までに2週間から1ヶ月という長い月日をかけて作られるとても手の込んだ印刷技法なのです。手順は次の通りです。
①デザイナーによる木版のデザイン作成
②職人による木版の彫刻
③綿布の媒染(布に染料が入りやすくする)
④天日干し
⑤ダイマスターによる染料の調合
⑥木版を使った捺染
⑦洗浄と日陰干し
これは当店がメインで取り扱っているハンドブロックプリントの工程です。
この捺染と呼ばれる作業は印刷するデザインや色の数によって1枚の布に100回~500回ほど木版が押されます。気の遠くなるような作業ですが、この美しい模様を生み出していく工程はセラピーのような効果があるそうで、だからこのプリント技法がずっと続いてきたのかもしれません。
様々なハンドブロックプリント
ハンドブロックプリントにはいくつかの種類があり、バグルー、サンガネール、ダブなどがありますが、これらはインドの北西部に位置するラジャスターン州、グジャラート州発祥の染色技法で、各地域の環境の違いなどによって異なる染色技法がコミュニティとして発展したのです。例えば、川のあるサンガネールではしっかりとした洗浄ができるため白地に捺染した明るい色味であったり、反対に川の無いバグルーでは丁寧な洗浄がいらない黒地や暗い色味が特徴となっています。今ではインド全域でハンドブロックプリントが行われていますが、天然染料や植物染料はほとんどの地域で使われておらず、退色しにくい化学染料(合成染料)が使われています。現在も天然染料が使われているのは発祥の地、ラジャスターン州の郊外の一部の地域のみだそうです。